阿部智幸(あべとしゆき)
水彩画家
日本美術家連盟会員
JWS日本透明水彩会会員
1959
山形県酒田市生まれ
新聞社デザイナー、美術教師を経て
2008
水彩画制作を中心に活動
2010
内藤秀因記念水彩画展 大賞
2011
日本水彩展 上野の森美術館賞
2012
第2回日本透明水彩会展(横浜)
フランス"L'Art de l'Aquarelle"に掲載
日本透明水彩会選抜展/京橋
ドス・エルマーナス国際水彩画展/スペイン
星野木綿&あべとしゆき水彩画2人展/鶴岡
酒田市美術館 やさしい美術鑑賞入門講座/全4回
2013
フランス"Pratique des Arts"第110号 表紙, 巻頭特集
アルメリア国際水彩画展/スペイン
2014
バルセロナ国際水彩画展/スペイン
GNWP第3回国際水彩画交流展/上海
第1回世界水彩博覧会/タイ
はるさき夫妻&あべとしゆき水彩画3人展/鶴岡
トスカーナ水彩スケッチ旅行/イタリア
2015
山形銀行カレンダーに作品採用
川岸富士男の世界展特別出品/酒田市美術館
IWSメキシコシティ国際水彩画展/メキシコ
第4回国際水彩ビエンナーレ展/南フランス
フランス"The Art of Watercolour"に掲載
国際水彩エリート展/台湾
エル・ポエタ2記念展-水彩作家達との出会い-/大宮
2016
青江健二&あべとしゆき ふたり展/京都
水彩セッション2016展/渋谷・Bunkamura
ファブリアーノ水彩展2016/イタリア
イギリス"Artists & Illustrators"9月号に掲載
Taiwan World Watercolor Competition & Exhibition出品
2017
広尾アートアカデミー講師作品展/京橋
ファブリアーノ水彩展2017 /イタリア
水彩画 光のプライム9人展/横浜
2018
青江健二&あべとしゆき ふたり展/新宿
りそな総研「りそなーれ」表紙に3年間作品掲載
Masters of Watercolor 2018/サンクロペテルブルグ
High Prototype 1st World Watercolor art exhibition/タイ
2020
あべとしゆき水彩オンライン教室開始
2011 内藤秀因水彩画記念館
2012 酒田市松山文化伝承館
2013 八重洲ブックセンター/東京
酒田市美術館/山形
Galleryエル・ポエタ/大宮
藤崎美術ギャラリー/仙台
2014 ギャラリーf分の1/東京
恵埜画廊/山形
丸善・丸の内本店/東京
セントラルアート/名古屋
藤崎美術ギャラリー/仙台
2015 横浜髙島屋美術画廊/横浜
Galleryエル・ポエタ/大宮
京王プラザホテル/新宿
恵埜画廊/山形
ギャラリー青葉/仙台
2016 丸善・丸の内本店/東京
MARUZEN&ジュンク堂/梅田
藤崎美術ギャラリー/仙台
2017 横浜髙島屋美術画廊/横浜
Galleryエル・ポエタ2/大宮
2018 丸善・丸の内本店/東京
恵埜画廊/山形
2019 本間美術館/山形県酒田市
横浜髙島屋美術画廊/横浜
2020 丸善・丸の内本店/東京
2021 横浜高島屋美術画廊/横浜
M+ ART GALLERY/東京
恵埜画廊/山形
2022 丸善・丸の内本店/東京
2023 Artglorieux GALLERY OF TOKYO
M+ ART GALLERY/東京
▪NHK文化センター
(青山・横浜・町田・京都など)
▪朝日カルチャーセンター
(新宿・横浜)
▪青葉アートスクール
(仙台)
▪あべとしゆき水彩教室
(神田・新大阪・オンライン)
❏ 水彩画 静かな光を求めて
日貿出版社/2013
❏ 水彩画 小さな光の音楽
日貿出版社/2014
❏ 水彩画 光を奏でるために
日貿出版社/2016
❏ 水彩詩画集 静けさを聴くために
日貿出版社/2018
❏ 水彩画 自然を描く
グラフィック社/2019
❏ 見たい! 聞きたい! 透明水彩!
日貿出版社/ 2020
❏ 水彩で描く四季の静かな光
世界文化社/2020
❏ 水彩画 光のアンサンブル
日貿出版社/2021
❏ 水彩画 透明な光の余韻
日貿出版社/2022
❏ あべとしゆき水彩画集
芸術新聞社/2023
以下、共著
❏ 水彩で描く美しい日本 ふるさと東北
日貿出版社/2012
❏ JWS透明水彩レシピ
日貿出版社/2015
❏ JWS透明水彩レシピ2 水を描く
日貿出版社/2016
❏ JWS透明水彩レシピ3 樹を描く
日貿出版社/2018
❏ JWS透明水彩レシピ4 光と影
日貿出版社/2020
❏ JWS透明水彩レシピ5 画材を知る
日貿出版社/2022
私たちが目にするすべてが光だ。明るい光、やわらかな光、暗い光。私は自分の本に「静かな光を求めて」というタイトルを付けたが、「静かな」という言葉はもともと音に冠するものであり、光に冠するものではない。しかし、私は時々本当に美しい「静かな光」に出会うことがある。周りの音が全て無くなるような感覚、今まで気にも留めなかった風景が、そのやわらかな光の演出で涙が出るほど美しい風景に見える瞬間。私はそんな時間がたまらなく好きだ。
私たちは、与えられた命の中で生きている。数十年という限られた時間の中で生きている。宇宙誕生からの気の遠くなるような時間と、深淵で果てしない暗闇の中に浮かぶ地球という岩塊に乗っかって暮らしている。そして目という光を感じ取る感覚器官を持った人間として存在している。それを思うと、我々人間が何かを見ることができるということは、まさしく奇跡以外の何ものでもないのだ。私たちは、光を見ることができるという奇跡にもっと感謝しても良いのではなかろうか。
現代の芸術はテクノロジーと合体して、実に多彩で刺激的な表現で私たちの視角を喜ばせてくれる。コンピュータやプロジェクターを駆使して、今まで見たことも無い夢のような世界を見せてくれる作品もある。私はそれらの新しい芸術を驚きと感激とともに歓迎する一方で、何気ない日常の中に「奇跡」を感じ取る気持ちを忘れたくないとも思っている。今、自分の目の前にある、手で触れられるものをじっくりと見つめたい。それが私の描く水彩画の原点だと思っている。
−「水彩画 静かな光を求めて」より 2013年 日貿出版社
絵は、本来ひとりで描くものだと思う。誰のためでもなく、何かのためでもなく、ひとりで好きな本を読むように、ひとりで好きに絵を描く。それだけで十分に意味があると私は思う。私自身、プロの画家として活動し、展覧会をしたり、講座で教えたりしているが、絵を描く時はそれが仕事であることを忘れてしまう。ただ、純粋に筆を持ち、真っ白な紙の中に自分のイメージを広げていく。溶いたばかりの絵の具が水彩紙にスーッと吸い込まれていく感じがとても好きだからだ。
絵との関わり方は、人それぞれで良いと思うし、どれかが正しいというものでもないだろう。自分もかつては、美術史の流れの中に自分の位置を探している時期があったし、何かしらの賞をいただく事に喜びを感じていたこともあった。そこで生きがいを感じられる人はそれで良いと思う。挑戦し、競い合い、磨き合う中で生きていけば良い。
私には、好きな画家が何人かいるが、その人たちの共通点は、ひとりで、自分のペースで絵を描いていることだ。コツコツと自分の絵を描きためている。自分の暮らしの中で、ひっそりと絵を描いている。絵が沢山たまると展覧会を開き、絵を見てもらう。特に宣伝もしていないのに、多くの人が集まってくる。世の中には、きちんと絵を見る目をもっている人、絵を見る楽しみを知っている人が少なからずいる。展覧会に何度も足を運んでくれる。そして、時に絵を求めたりもする。その画家の絵を家に飾りたいというだけではない。その画家に絵を続けてほしいという願いがこめられている。そして画家は、また一年絵を描き続ける。
絵は、本来ひとりで描くもので、自分に向けられて描かれた絵こそ、人の心を揺らす力を持っているのだと、私はその画家を通して学んだ。
静かに絵を描く人になりたい。そして、静かに絵を見る人でありたい。
−「水彩画 光を奏でるために」より 2016年 日貿出版社
私はニュースや新聞、週刊誌が苦手だ。もちろん正しい情報を届けてくれる場合も多いのだが、あまりにも悲惨な出来事や憶測と偏見で曲げられた言葉に心が傷むからだ。声には出さないとしても、私と同じように今の報道の在り方に心を傷めている人は多いのでないかと感じている。実際に起こっていることにも、そしてそれを過大に拡散するシステムにもやりきれない気持ちになる。そっとしていれば解決する問題が報道や情報により複雑になり大問題に発展していくことは少なくない。今の時代は簡単に情報を集めることも発信することもできるが、本当に知るべきこと、知らなければならないことはどれくらいあるのだろうか。紙面があるから、時間枠があるからという理由だけで小さな出来事が大きく報道されている事が多すぎると感じている。
また、一方で報道として流れていることがこの世界のほんの一部でしかないことも私は知っている。本当に美しい心を持った人、本物の良識のある人は、けして自らそれを表に出すことはないからだ。私はきちんと自分の役割を果たしている人が好きだ。目立たなくても誰かのために誠意を込めて働いている人たち、人知れず周りに優しくしている人たち、立場の弱い人を守ろうとする人たち、心の美しさを無くさないようにしている人たち。そんな人たちがニュースにも話題にもならず、お互いに出会う事も少なくこの世界にひっそりと暮らしていることを私は信じている。山道の近くに咲いている花を見ることはできるが、道のない山の中に咲いている花を見ることはできない、でもそんな場所に咲いている花は、多分本当に美しい。私は芸術のために絵を描いているのではない。おそらくは出会う事のない、そのような心の美しい人たちが、ふと足を止めてくれるような絵を描く事。それこそ私が目標としていることなのだ。
−「水彩画 小さな光の音楽」より 2014年 日貿出版社
last update: 2023.10.27